にしはらホームメディカルケアクリニックのコラム

病院と自宅
皆さん、病院についてどのような印象をお持ちでしょうか?私の印象はというと医師になってから30年以上病院で働いていたので、皆さんと少し感覚がずれていたり、麻痺しているかも知れませんが・・・。私は数年前に眼の手術を受けるために入院しました。その際に何とも言えない緊張感と不安感を覚えたものです。手術を受けるためなので当然そうなるものと思っていましたが、見慣れた病院の受付や、病室、手術室がいつもと全く違う異質なものに感じました。みなさんはもっと違和感を覚えることでしょう。そして病院とはなんと不自由な場所だと感じました。すべて時間が決められているし、プライバシーはほとんど無視だし、ご飯も味気ないし(実は食事の美味しい病院も多くありますが、器や盛り付けが良くないために全然美味しそうに見えません)、晩酌もできないし、・・・。何といっても大部屋だと、おならをするのも気がひけます。とは言っても病院は治療を効率よく行うのには極めて有用な場所です。すなわち、手術を行ったり、集中治療をしたりするのを最も得意とする場所です。しかし、その分、けっして快適とは言えません。ということで状態が落ち着いたら長居する場所ではありません。万一、長く居たいと思っても、今では保険診療上の問題からもすぐに追い出されます(退院を勧められます)。
一方、自宅はと言うと、住み慣れた、そして快適な場所でしょう。基本的に追い出されることもありません。一部には追い出されたり、家へ帰りたくないおじさんたちも多くいると聞いていますが・・・。以前は自宅で治療を受け続けるなんて、なんと大変な、なんと無謀なという時代もありましたが、今は国が在宅医療を推進していることもあり、様々なサービスが自宅で受けられるようになっており、自宅と言うメリットを最大限に生かしながら、治療を受け続けるという選択が可能となりました。
患者様と患者さん
少し前まで医療もサービス業であるという考えから、患者を様付け呼ぶのが当然であるとの風潮がはびこっていました。病院では接遇研修なるものもあり、我々医師も患者様と呼ぶようにと教育されたものです。私はなぜ一律に様と呼ぶのかと疑問を持ち、反対したこともありました。なぜなら患者と医師あるいは医療従事者は単なるサービスを提供する側、あるいはサービスを受ける側というものではなく、病やけがという共通の敵に共同して立ち向かう、いわゆる‘同志’であると考えていたからです。同志を様付けで呼ぶのはおかしいですよね。単なるサービスととらえたことでモンスターペーシェントなどの出現を助長したとの指摘もあります。今では、様々な理由から様からさんへ呼称を改める病院・診療所が増えてきました。いずれにしても我々医師および医療従事者は専門家として敵に適切に対処できるように日々研鑽を積んでいかなければと考えています。ということで、当院では書類などでは様を使用する場合もありますが、通常はさんと呼ぶこととしています。